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ほわいと ★ すかい




★.....six day


 

やわらかな光がまぶたを透かして瞳をくすぐる…
「…んんっ…」
吐息のような言葉をこぼし、意識のスイッチを入れる私…
回り始めた思考が、身体を包み込むやわらかい膜を認識する…
それをギュウゥゥ…と抱きしめて、温もりをカラダいっぱいに吸い込む私…
「うんっ…♪」
受け取った熱を頬に溜めて、ソコを幸せそうに膨らませる私…

スッ‥と開いた薄目越しに、その優しさの正体を眺める…
「…毛布…?」
寝ぼけながら手繰り寄せて、ほっぺでじゃれる様に確かめる私…
「…人形…夢…」
ぬくもりの殻の中で、ゆっくり‥私は過去を巻き戻していく…

「母さん‥!」
たどり着いた大事な言葉で、勢い良く体を起こす私。
「私っ、ベットで寝てる…まさか母さんが2階まで担いでくれたの…??」
驚いてから、後悔と情けなさでシワのたまっていく私の顔…
枕元の目覚まし時計を手に取って、時刻を見つめる私…
「…よしっ、まだ6時前だ!」
小さく気合を入れて、パジャマのまま静かに階段を降りていく私…

ガララ…
陽が昇ってないせいもあって、夜みたいに暗い台所の色…
電気をつけて、昨日との違いを見比べていく私…
テーブルの上はキレイに片付けられてて、ラップのかかったお皿の上に、
残ったご飯がオニギリに丸められて並んでいる。
「コレはお弁当に使えるね♪」
小さい一口サイズのソレに海苔を巻いた図を想像しながら、冷蔵庫を開ける私。

「朝はまずコレっ♪」
扉のラックからパックの牛乳を取り出し、ガラスのコップいっぱいに中身を注ぐ。
「んっくっ…」
乾いた私のノドに優しくリレーしていく白いジュース。
「う〜!生き返るっ♪」
マブタをきつく閉じて、口に広がる"甘さ"と"匂い"にクラクラ〜と
酔っぱらっちゃう私。

「さっ、テンションも上がったしお弁当の準備しよっ!」
口元に付いた白いのを拭って、ご飯を洗い炊飯器へとセットする。
「まず冷凍のミニハンバーグとカマボコ、それに卵焼き作って…
あっ、ほうれん草のおひたし残ってる♪」
ちなみに母さんは職場でお昼ご飯出ちゃうので、お弁当は私の分だけ用意。

「あっ、味噌汁もたくさん飲んでくれてる♪」
小鍋いっぱいあったソレが、半分以下に減っててうれしくなる私。
ソコに冷蔵庫から取り出した豆腐一丁をぶつ切りにして加えて、
コンロを弱火でつける。
「コレとご飯と玉子焼きで許して母さん‥!」
単純な朝ごはんのラインナップに、ヒトリ頭を下げてる変な私。

隣のコンロに油を敷いたフライパンを掛けて、溶いた卵に冷凍の輪切り葱を加えて
お椀でかき混ぜる。
シュワァァ…
流し込んだトロトロ卵が、心地良いざわめきを上げてプクプク気泡をあげた。

「あちちっ…!」
箸で卵をかき回す私の手に、元気な油がパチパチと飛び上がってきた。
「母さんがこうやってるの見てるんだけど…アレレ?」
ふんわりしてくる予定が、フライパンの中でボソボソゴロゴロ固まっていく
私の卵焼き…
「あうう…母さんごめんなさいっ!」
挙句に底のほうが焦げ付いて、木しゃもじでソレこそいで皿に盛りつける。

熱〜いフライパンを恐る恐る流しへと運び、水をかけながらスポンジで
ゴシゴシとこする私。
「はいっ、0点っ!!」
「うわわっ?!」
突然すぎる声にその場で飛び上がる私。

「かっ、母さん!いつ起きたのっ…?」
まだ震えてるまんまのカラダと、情けない顔で後に立つ人に問いかける私。
「降りてきたのは今よ。昨日はTV見ないで早く寝たから目覚めも早いのよ♪」
う…んっ、と背伸びするパジャマ姿の母さん。
「それよりもソラ、危ないから油使った後はいきなり水かけるなって言ったでしょっ!
それに焦げはしばらく水につけて置いとくのっ、スポンジがズタボロでしょ!」
私に向けてたっぷりのため息を吐きつける母さん。

「はい、色々忘れてました〜」
自分でも失敗がわかってて、泣きべそ浮かべてコップの牛乳をあおる。
「ああっ、またそんな"大"コップいっぱい飲んでっ…!暴飲ばっかしてたら
一番安い低脂肪乳に変えるわよ!」
「ひいっ…!アレは薄いからヤダッ!!」
"水みたい"な味を思い出して、ブルルッ…と背筋が寒くなる。

「…ほんとアンタの"乳"好きにはため息でるわね…」
「うん、でも好きなんだもん♪」
トポポッ…て2杯目を注いでる私。
「…本気で低脂肪乳にするわよ、それとも脱脂粉乳がいいかしら?」
「あうっ…!」
怯えながら一気にコップを飲み干す私。

ピククッ…
(えっ…?)
急に胸がピリピリ痺れて固まる私。
「どうかしたのソラ?」
すかさず心配して私の顔を正面から覗き込む母さん。
「あっ、うん、なんか胸がうずいて…」
そう言ってふくらんでるトコロに両手を添える私。

「…その下のでしょ!」
パチンッ…
「ひゃあんっ…!」
いきなり母さんにお腹を叩かれて、ナカの牛乳がタプン‥って揺れた。
「朝から"パック半分"も飲んだら痛くなるのが普通なのっ!!」
お怒り気味の顔を突き出してくる母さん。

「ちっ、違うの、ホントに胸がなんかムズムズしだして…!」
「牛乳飲んで発情してたら女なんか務まるかー!」
クワッ、と大きな口で唾と言葉を飛ばす母さん。
「多分そんなんじゃないよ〜!」
母さんが取り上げた牛乳パックを手を伸ばして求める私。
炊き上げに入った炊飯器から立ち昇る湯気の向こうで、朝からアホな問答をしている
私たち親子でありました。




 

ピンポーン♪
「あれれっ、今日はフクちゃん??」
連日の朝の訪問客に驚いて目を丸くする私。
「痛っ、痛いです福原さんっ…!」
「あっ、雲さきくん今日も来たんだ…」
フクちゃんに耳引っ張られて、傾いた格好で抗議してる私と同じ背の男子。

「なんか学校から逆方向に向かう変なヤツがいて気になったのよ!
それでソラの家の前あたりで止まったから走ってきて捕まえたのっ!」
フンッ、と鼻息荒く雲さきくんを睨みつけるフクちゃん。
「彼"一様"知ってる人なの〜フクちゃん放してあげて〜」
パワフルなフクちゃんと見比べてると可哀想になって、思わず懇願しちゃう私。

「ソラの新しい友達なの?あんた同級生?」
雲さきくんを初めて見た風に疑いの目で観察するフクちゃん。
「雲岬 万里です。福原さんと綾のクラスの中間にあるC組に在籍してます…!」
しゃべりずらそうに、でもフクちゃんにハキハキと自己紹介してる雲さきくん。

(…こういうトコロはうらやましいなぁ…)
すぐにココロのほうで呟いてしまうのが私の悪い癖だ。
何にも逃げずに自分のスタイルを貫く雲さきくんは、迷惑だけどかっこいい…
「…って違う違うっ!コイツは変態なだけっ…!」
火照った顔をブンブン振り回してごまかす私。
「やかましいわよソラ!あらフクちゃんに昨日の雲さきくん、おはよー♪」
私に怒鳴って、先の2人に笑顔を向ける器用な母さん…
「おはようございますっ♪葵さんもコイツ知ってるんですね。」
「おはようございますっ‥!昨日が初めてですけどね…!」
こちらも器用に母さんとフクちゃんに返事してる雲さきくん。

「あらら、フクちゃん放してあげて、一様ソラの彼氏候補なんだから♪」
「ええっー!?」
一同驚愕する台詞を笑顔で吐いちゃうmy母さん!

「そうなのソラ?鳥乃はどうすんの…?!」
すごく心配してくれるフクちゃん、私も同感。
「綾のお母さん、俺がんばります!」
勝手に自信を高めてるマイペースな雲さきくん、にツッ込む気力なし…
そんな光景をニヤニヤ楽しそうに傍観してる母さん。
「もう、朝から自分の娘イジメないでよー!!」
取り合えず一言叫びで抗議する私でした。



ザザ…
いつものノイズの音が黒板の上のスピーカーから零れだしてくる…
早起きしたせいで、やや眠かった一時限目が終わりを告げる。
目の前の鳥乃くんの背中に、何か言おう…として言葉にできない私。
昨日と今日は朝練で早出してる鳥乃くん。
その首もとから香るわずかな汗の匂いを嗅いで、幸せにニヤつく私の顔。

「綾っ!」
(うわぁー!!)
そんな平穏ぶち壊しの一声に、なんとかココロの中で絶叫をこらえる私。
横を向くと、数メートル先の教室の入り口で私に手を振る雲さきくんの姿。
ガタッ‥
突然の声に注目してるクラスメート達を尻目に、他人のふりして雲さきくんの
隣を素通りして廊下に出ていく私。

(…ってバレバレだよね、きっと…)
ため息つきながら、少しでも教室を離れたいと足を進める私。
「あっ、綾!?」
私が無視して"短く放心"していた雲さきくんが我に返り、後ろから
走って追いかけてくる。

階段の踊り場でふり向いた私は、怒った目で後ろの雲さきくんを睨みつけた。
「突然来ないで!大きな声で呼ばないでっ!」
朝のことも含めて釘を刺す私。
「ごっ、ごめん‥!」
意外に?あっけなく謝る雲さきくん。
「…で、何か用?」
隅っこの壁にもたれながら、小さく呟くように質問する私。

「今日か明日、綾とデートがしたい!」
「はぁ?!」
いつもよりは小さな雲さきくんの声と、それより大きな私の声。
そんなやり取りに足を止める通行人の方々…
周りのギャラリーよりも、目の前で照れてる雲さきくんに見とれてる私…
(私の胸摘んでも平然としてたのにコイツ…)

「ダメ…?怒ってる?」
心配そうに聞いてくる雲さきくんは普通の男子っぽい。
怒ってない…
ほんとに小さな声で返事する恥ずかしがり屋の私。
(鳥乃くんに知られてイラッとはしてたけどね…)
怒った理由の大半はソレだ。

「だけどダメ。OKできない…」
経験がない事だから、アタマがこんがらがってる私。
この返事はかなりがんばったつもり…

「わかった!また出直す♪」
なぜか嬉しそうな雲さきくんの笑顔。
前回のように私を置き去りにして走り去っていく…
パチパチ‥
「え、あ、ヨッちゃん!」
いつの間にかギャラリーの中で私に拍手してる親友。

パチパチパチ…
釣られて広がっていく拍手の海。
「えー!今のの何がいいのー?!」
ヨッちゃん及びに周りの皆に真っ赤な顔を見せる私。

「…まっ、引きが多いと逃げちゃうから次は攻め時ね…!」
ポン、と肩を叩いて"アドバイス"を囁くヨッちゃん。
「なっ、ないよ次なんて!」
どもりながら、その場を去ろうとするヨッちゃんに付いていく私。

「…あっ、そういえばフクから放課後"用"があるから、飯食ったら体操着きて
体育館に来い!―って伝言よ。」
「えっ?朝一緒だったけどそんなの聞いてないよ…?」
「…忘れてんのよあのスポーツ馬鹿…!」
フン…と機嫌悪そうに鼻息吹いて教室に戻ってくヨッちゃん。

「それと"レクチャー"は明日だから予定空けとくのよ…!」
「はぅ…!」
嬉しくない予定を再度通告されて固まる私。
再び響くチャイムの中、断る口実探しながら教室に帰る私でした。




 

「たしか体育館だよね…」
あっという間に半日の授業が終わって、一人そこに向かう私。
残りの休み時間にフクちゃんのクラスを訪ねたけど、
忙しいフクちゃんはいつもどこか行ってて会えずじまい…
そんな私は制服のまま体育館の正面ドアを恐る恐るに開けた…

「おおー!待ってたよソラ!」
「ええーっ!?綾川…さんっ?!」
元気なフクちゃんの声と、歓迎しない女子の声が体育館に響いた。
特に用意された器具もない広いコートの中心に10人ほどの女子が固まり、
その中から手を振ってやってくる笑顔のフクちゃん。

「ささっ、手伝って欲しいことあるの、着替えてソラ♪」
「ええっ…??」
背中を押されて用具室に案内される私。
ガチャッ‥
鉄の扉を閉じるフクちゃん。

「ねっ、あっ、あれバスケ部だよね?!」
ヒントは床に転がってたオレンジのボール。
「よく見てるねソラ♪この学校って運動部盛んじゃないから、バスケ部以外にも
メンバー足りてないトコロが多いのよ!」
背中を向けて扉と睨めっこに立つフクちゃん。
ソレを確認してから急いで体操着に着替える私。

「…ヨッちゃんに何か言われた…?」
できるだけ"普通"に質問する私。
「ああ、言われた♪あんた高校入ってからスポーツばっかで、ソラのこと
全然かまってないってね!」
大きな声で爽やかに笑うフクちゃん。
「わっ、私は気にしてないよ!フクちゃんには好きなことしてて欲しいし♪」
素直な気持ちで親友を応援する私。

「ありがとソラ、でもたまには"私も"ソラと一緒に楽しみたいのよ♪」
「…へ?」
意味深な言い方がヨッちゃんみたいで気になる私…
「おっ、おまたせOKー!」
パン、と太ももを叩いて気合入れる私。
「よしっ、行こっ!」
勢いよく用具室の扉を開き、一緒に出るフクちゃんと私。

その正面に、ズイッ…と集団から一人進み出てくるポニーテールの女の子。
「ふっ、福さんが連れてくる約束の"助っ人"って、ホントに綾川さんっ…?!」
驚きと見下しの視線を向ける180センチの長身は、確かクラスメートの
菜津風(なつかぜ)さん。
「そう♪さあ予定どうりに練習試合始めましょ!」
不安いっぱいの部員と私をよそに、まるで主将のようにリードしてるフクちゃん。

「…ソラにはボールを回さないようにみんなにお願いしてあるの。
だからソラは相手のパスの邪魔にだけ専念してみて…!」
私の横で優しくアドバイスするフクちゃん。
「…それだけでいいの?」
思ったより"楽そう"な役目に胸を撫で下ろす小心モノ…

「ただしっ、みんな真剣だからソラも真剣にやってあげて!
体育の時みたいなのはダメだよ!」
「ぅ…!」
気合のこもった熱い言葉に、うなずきだけで返事する私。
(バスケットかぁ…でも、走り回って邪魔するだけなら…)
イメージをアタマに浮かべてみる私。

「…綾川さん、私たち大会も近くてピリピリしてるから
ケガだけはしないでよねっ…!」
すれ違いざまに、菜津風さんが目も合わせず私に言う。
普段、教室では私と同じくらい目立たない口数の少ない菜津風さん。
(なんかヨッちゃんタイプだよね…)
そう考えると、やや嫌味調の言葉がこの人なりの"気遣い"だって思った…

ダンッ…
ボールが地面を叩く音を合図に、一斉に走りだすみんな。
「わわっ…!?」
激しい足音が密閉されたコートを震わせて、呆然と傍観してしまう私…
フクちゃんはというと、無駄のない動きと正確なパスで、
正規部員の人から浮いて見えない…
「ソラの足なら大丈夫っ♪」
走り過ぎながら私にウインクするフクちゃん。

(そうだ…、真剣にしなきゃ…!)
フクちゃんの言葉を思い出し、集中する私…
グッ…と足に力を溜めながら、ボールの動きを見つめる…
「ふぅっ…!」
「えっ‥?」
ボールを構えた子の正面に回り込む私。
少しは驚かしたもののあっけなく違う子にパスが送られる。

「くそっ…!」
ダンッ…
「ええっ…!?」
一気に駆けてパスを受けた子の前で飛び上がって邪魔をする私。
ダダン‥
変な方向にパスが飛んで、床を跳ねて転がっていくボール…

「何してんのっ!しっかりしてっ!」
その子に激を飛ばす菜津風さん。
ちなみに私とフクちゃんは同じチームで菜津風さんは敵だ。
ダンッ…
再開されてボールが菜津風さんへと回る。
「…うわっ!」
ロングシュートに構えた長身の正面に並んで浮かぶ私の身体…
チッ…
指が何本か触れたけど、ゴールポストへと突き刺さるボール。

「ああ〜うまくいかないねぇ…」
落ち込んだため息をつく私。
その正面に立って、驚いた顔で私を見下ろす菜津風さん…
「ねっ、今の動き何?急に来てすごく跳んだよね…??」
なんか混乱してるっぽい台詞で問いかけてきた。
「アレ…は高校入って一部の人にしか使ってないから〜」
"醜態"をさらしたと思って、顔を赤くする私。

「ささっ、休んでないで続行するよっ!」
フクちゃんが大きな声でみんなを仕切る。
ダダッ…
「うわっ、また来たっ!」
ボールとほぼ同時に回り込んできた私に、嫌そうな顔を向けるその子。
(あっ、取れる…?)

バシッ…
瞬間的に無防備なボールを上からはたき落とす私。

「うそっ!なんで体育じゃ全然ダメな綾川がっ…!?」
菜津風さん達が驚いてる視線の中、転がったボールを拾う私。
「ソラ、こっち…♪」
すぐ横に駆けてきたフクちゃんの構えた手にボールを投げる私…
ダダダッ…
ゴールの近くだったフクちゃんが大きく飛び上がって、
ボールを転がす様にその輪の中に入れた…

「やたっ‥!」
親友のシュートの瞬間に熱くなる私。
「ソラのおかげ♪」
「えっ、やっ、そう?」
フクちゃんに感謝されて、なんかくすぐったい私のキモチ。

「次いくよソラ♪」
「おっ、おう!」
なんかフクちゃん釣られて気合吐いてる私…
ダダダッ…
「はっ、速いよこの子っ…?!」
3度目のパスの邪魔で向かい合わせたその子が、怯えるように私に言う…
バッ…と別の子に回るボール…

ダタッ…
「なんでボールと一緒にこの子が来るのっ?!」
警戒されてボールは捕れなくなったけど、とにかく追いかけていく私。
「はっ…!」
一緒に跳び上がってシュートのボールを指で弾く。
「菜津風、この子運動オンチじゃないよっ…!」
悲鳴のような台詞を吐くその子を離れ、ダッシュでボールを追う私。

「わっ、私だってこんな綾川見たことないよっ!」
ボールを拾いながら、目の前にいる私に驚いた表情を向ける菜津風さん。
「それもミソなのっ♪」
ダンッ…
「ああっ…!」
軽やかにその手からボールを奪っていくフクちゃん。
すかさず別の子にパスが回ってボールがゴールをくぐった…

「はぁはぁ…バテバテだぁぁ…」
ようやく休憩になって、床にへたりこむ私。
「…なっ、なんなのあなたっ…?体育の時と全然違うわよ…!?」
いきなりやって来て、見下ろす格好で質問してくる菜津風さん。
「プレッシャーが無いからよっ♪」
息絶え絶えな私の代わりに、フクちゃんが回答をしてくれる。

「ほら、パスって重要でしょ?それにソラってボール競技苦手なのよ♪」
「…??だからって"パスしない"って約束だけで人が変わったって言うの?」
納得のいかない…難しい顔でフクちゃんを睨む菜津風さん。
「苦手=プレッシャーよ♪気弱なタイプってソレで実力がだせないでしょ?」
なんか先生みたいに雄大に穏やかにしゃべってるフクちゃん…
をポケ〜と見てる私。

「ソラは不器用だけど、その瞬発力と跳躍力は意外に凄いのよ!
それをミックスして狭い空間や密集状態をすり抜けるよう動くから
瞬間だけ速くなるの!」
「…??でも、確かに不思議な速さで正直こっちがプレッシャー受けたわ…」
一様納得した?菜津風さん、その後ろでも何人かの人がうなずいてる。

スッ…
「へっ、何?」
目の前に伸ばされてきた、菜津風さんの長い腕に驚く私。
「綾川さん、馬鹿にしたのに真剣に練習に参加してくれてありがとう…!」
ややぎこちないお顔と声でお礼?を言う菜津風さん。
(ホントにヨッちゃんタイプだね…♪)
ココロで微笑んで立ち上がろうとする私…

「アタタ…??」
なぜか一番痛い両足の裏。
「どうしたのソラ?」
靴下を脱いだ私のその部分を覗き込むフクちゃんと菜津風さん…
「うわっ…!」
二人が同時に悲鳴を刻む。 「え?何…」
「あっ、ソラ見ないでいい…!」
隠すフクちゃんの指の隙間から、見事にベロン‥と皮のめくれた足の裏が見える…
その大きさはピンポン玉サイズ!!
「うわぁぁ〜♪」
「ああっ、ソラ!!」
血の気が引いてそのまんまぶっ倒れる私。
その後、フクちゃんにおんぶしてもらって保健室で治療してもらい、
挙句に家に送ってもらう途中まで気を失っていた情けない私でありました…




 

「アイタタッ‥!」
台所で腰を曲げた姿勢で硬直する私。
「体育の時の3倍くらい運動したもんね〜」
お婆さんみたいに、痺れる腰を手のひらでスリスリ撫でて鎮める私。
ちなみに皮の剥けてるツマ先を浮かして、カカトで立ってて安定は最悪…

4時に帰宅した私は昨日の様に晩御飯作りをがんばってる。
おかずは味噌煮込み風うどん。
あくまで"風"で、濃い目のミソ汁に最後にうどんを加える自己流メニューです。
出際の悪い準備が完了したのはもう7時前…
「…今日も遅いんだ…」
ポツンと私は呟き、ズキズキ硬い身体を引きずって2階へと上がる。

「ふぁあぁ…!」
気が抜けた大きな欠伸をしながら部屋着に着替え、机に座って宿題を広げる私。
「ふぁああ…!」
更に大きな欠伸がでて、睡魔に包まれた私のまぶたがスーッと閉じていく…
「ちょとだけ寝よ…」
眼鏡を外し、机に敷いた自分の腕枕に顔を埋める私…
「…目覚ましぃ…」
そのまんまの格好で手探りに時計を探す私…

ガチャ…
時計のカタチをしたモノが、手のひらの中でクルリと回った…
「す……」
言葉が寝息へと変わった私は、その違和感と"音"に気付かない…
「おや☆今日はソラお疲れだね♪」
時計状にくり貫かれた小さな黒い穴から、血の様に赤い目が覗いて
陽気な声を漏らした…

「それにしても便利な"ノブ"だね☆"握る"動作なら扉以外でもいいんだね♪」
穴の縁をグルリ‥と見回して、人形が独り楽しそうにしゃべる…
「じゃ☆いつもの診察室へ招待するよん♪」
小さな穴から黒い腕が伸びて、一瞬でアタマから私の全身を吸い込む…

ガチャンッ‥
金属製のアナログな目覚まし時計が寝転がって、主人のいない机の上で
カチカチ‥静かに時を刻むのでした…



すぅ………
暗い闇だけの世界に、ユラユラと浮かぶ私のカラダ…
「ふふふ〜ん♪」
その上を楽しげに散歩する2本の黒い指…
うくっ‥!?
靴下越しに"傷"のトコロを突付かれた私が小さく声を漏らす…

「ココだね♪」
スス‥
指は左右の足の裏を、直線を引く様に軽くなぞる…
パララッ…
ぼんやり光った靴下が、砂みたいな粒になって足から崩れて闇に溶けていく…

「うん☆たいした傷じゃないねソラ♪」
陽気な人形の声に合わせ、めくれた皮の周りをスキップして回る2本の指…
「でも小人の命令だから仮治療しとくね♪」
"パチンッ"
2本の指が交差して甲高い音を奏でる…
ニュン…
指の間から細く鋭い針が生えて、ブウウ…ンと淡い緑の光に包まれる…

「ちょっとチクチクするよ〜♪」
指は針を摘んで構え、ソレで足裏の傷の縁をつっ突き始めた…
うっ、ううっ…!
小刻みに伝わってくる痛みにピクピクと震える私の身体…
プチュゥ…
刺された部分の皮膚がトロけて、ピンポン玉サイズの傷が少しづつ塞がれていく…

「オッケー☆傷口は治したから、"中身"は自分でがんばってね〜♪」
何にもなかったみたいにキレイに治された私の足の裏…
その前で、スーッと消える緑に光る針…

「じゃあ☆いつもの始めるよん♪」
スススッ…
指たちは今度はアタマから足先まで全身をなぞり、全ての衣服が砂粒に分解されて
闇の中へと崩れ落ちる…

ううっ…
私は裸になった違和感で、無意識にカラダをクネッとねじる…
「イタタッ…!」
そのまま苦悶の表情で固まる私…

「ふふ☆筋肉が随分疲労してるねソラ♪」
そう言いながら私の胸を登っていく指たち…
プニ プニッ…
うんっ…!?
筋肉痛とは違う刺激に戸惑う私のカラダ…

プニョン‥
あんっ…!?
指に乳房の腹を弾かれて、大きな口から声と唾液を吐き出す私…
「ふふふ☆ソラは運動するとおっぱいの反応が良くなるんだね♪」
プニン プニン…
うんっ、あっ…!?
乳房を下から叩いて、ボールみたいに弾ませて遊ぶ指たち…

「おっぱいの感度レベルが55%もあるよ☆愛撫してないのに凄いねソラ♪」
楽しそうな人形の声に合わせて、しつこく私の乳房を揺らす指たち…
ううっ、あぅっ…!?
疲労で意識の薄い私は"感じる"ことも曖昧なまま、甘い声をポロポロ‥
唇からこぼしていく…



 

プニョ‥ン
ううん‥!!
大きく乱暴に乳房を弾かれて、また唾液を宙に吐き散らす私…
「うふっ☆元気で問題なし♪」
プルッ‥と揺れの引いていく乳房に向けて、満足そうな声で語る人形…

グググッ‥2本の指がその胴を長く伸ばし、アタマが2つ、3つ…と
幾つもに分かれていく…
「ちょっと"痛い系"で苛めたけど、今度はソラの大好きな"優しい系"で
苛めてあげるね♪」
いやらしく呟く人形の声を背景(バック)に、ザワザワと無数に分裂した指が
蛇の様にカラダを揺らす…

ニュルルルッ…
ひっ、ひゃあぁ…!?
"蛇"たちは背中から左右の脇の下を擦って前に回り込み、
ツルツル柔らかい頭で私の乳房を付け根から囲む様に群がった…

プニュッ プヌヌッ…
ぅあっ‥!あぁんっ…!?
ふくらみの根元を360度からデタラメに突付き上げる蛇たち…
ぅうっ‥!んぁあ…!?
カラダを揺らして抵抗する私だけど、蛇たちはピタリはり付いて
乳房を弄り続ける…

「ふふ☆ニンゲンのおっぱいは乳首だけ感度センサーが発達するけど、
ソラのは"全部"がキモチ良くなるように育ててあげるよん♪」
プヌン プヌッ プミュムム…
あぅぅ‥!んぁんっ…!?
ジワジワ‥おっぱいとアタマに拡がっていく熱と痺れ…

ツツ…
ひゃぁ‥?!
いつのまにか肌いっぱいに汗が噴いてて、動くと這い転がってその辺をくすぐる…
「ふむむ☆感度が60%に達したけど安定してるねん♪」
それは私がいつも気を失う時の数字…

「やっと感情値の限界が上がったねソラ♪」
悶えながらも呼吸に大きな乱れの無い私の寝顔…
「でも眠ってるだけじゃ"星"の量が増えないから少し起きよねソラ…♪」
チュプ‥
うあ‥!
1本の蛇の頭から針が生えて、ソレが乳首のてっぺんに刺さって何かを注射する…
う…あれ‥?」
ぼんやりと目を覚ます私…
「うぁぁ…きっ、キモチわるい…?!」
力の入ってない声でブルブル‥震えながら呟く私…

「うん☆ソラの"星"は起きてる時が一番たくさん出るね♪」
ニュルル…
「きゃっ、やぁ…?!」
汗ばんだ肌の上を蛇たちの頭にくすぐられて、可愛い声を出しちゃう私…
「小人は興味ないけど、"星"の材料は"感情"なんだよ〜♪」
蛇のアタマにはスポンジ状の小さな穴が幾つも開いてて、
ソコから私のおっぱいの汗をチューチューと吸っていく…

「うん☆また美味しくなったねソラ♪」
「ぅぅぅ…何が…??」
半分くらいしか目の覚めてない私は、声を探して虚ろな目をキョロキョロ動かす…
ググッ…
無意識に太ももに力が入って持ち上がり、宙でしゃがんでる格好になる私…

「ソラは考えるとダメだから、シンプルに感じようね♪」
クチュッ…
「ひっ、ひゃぁ…?!」
お股に冷たいモノが触れてブルルッ…と震える私…
太ももがやや左右に開いてるせいで、大事な部分が少し口を開けていた…
その小指程度の穴に下から現れた細身の蛇たち数匹、その頭を挿し込んだのだ…

クチュ‥クニュニュッ…
「ひぃぃ‥?!」
蛇たちは冷たくて細い身体をくねらせて、私のナカを這いのぼっていく…
「何‥?おなか中(なか)…?!」
相変わらず寝ぼけてトロケてるアタマで、おヘソの方を不安げに見つめる私…
ボケてる私だけど、"怖さ"を認識してて涙がポロポロと零れ出していく…

クチュッ‥クチュン…
「ひっ、ひぐぅ…!?」
1本がストローほどの蛇が、それぞれ勝手に狭い私の中でクネクネ踊って暴れる…
「う〜ん☆ソラはおま●こよりおっぱいの方が美味しい星が出るね♪」
「うぁあぁ…?!」
この前みたいに濡れないその中を弄りながら、ため息みたいに呟く人形の声…

「ソラはこっちの方がいいんだよねん♪」
プミッ‥
「きゃんっ…!?」
大きく甲高い声で鳴く私…
2匹の蛇の頭に摘まれた私の乳首が、ゆっくりと硬くなっていく…

「しかも反応がいいね☆元気が良くて可愛いよん♪」
起き上がった私の乳首に、同じ大きさの蛇が頭をスリスリを擦り合わせる…
「ひゃうぅぅ…?!」
とんでもなくくすぐったくて、激しく身体を震わせる私…
「ふふふ★がんばってキモチ良いって感じてごらん♪」
不真面目に応援する人形の声…

キュッ‥キュ キュ キュゥ…
「うぁあぁあぁ…?!」
激しく擦られて、火がつくみたいに熱くなる私の"先っぽ"…
「アツイ…何…おっぱぃ…?!」
ブルブル痙攣しながら、遠ざかっていく私のアタマの中の光…

「あらら☆ココで限界だね♪」
残念そうな言葉を、うれしそうに呟く人形…
半分しか覚めてなかったアタマとマブタがピタリ‥と閉じて、
全ての感覚の光が私から消える…

「ふふふ☆またねソラ♪」
歪んでいく私の姿に、人形はポツリ‥別れの言葉を送るのでした…




 

ポカッ!
「痛っ‥?」
後頭部を軽く叩かれて、また目を開く私…
「ソラっ、机で寝るなって言ったわよね〜♪」
耳元で囁くように語り掛ける妖しい声…
生暖かな空気と、その声の主に気付いて大きく目を見開く私…

「わー!?ごめんなさい母さんっ!」
寝ぼけてる私は、顔を上げて正面の窓に大きな声で謝る。
「…なんか真剣にボケられると母さん余計に哀しいわ…」
そんな私の背中に零される母さんのため息。

「あっ、やっ、今の寝ぼけてたの、ホントっ!」
ふり向いて、必死に、ボロボロに、弁解するダメダメの私。
「わかってるから"真剣"って言ったのよ。それよりアンタすぐご飯食べれる?」
目が半分寝てる私にあきれた視線を向けて聞く母さん。

「あ…ちょっと…ええっと…」
「十分!顔洗うか、お風呂先に済ませなさい!」
"胃がキモチ悪い"と言えない私を表情で看破し、鼻息一つ残して
1階に下りていく母さん。
「あぅ…最低…」
情けなさと罪悪感に苛まれる私は、着替えのパジャマを手にぶら下げて
トボトボと階段を下りていく…

「ソラ、フクちゃんから足の裏のコト聞いたわ。コレ履いてシャワー浴びなさい!」
不機嫌というよりただテンションの高い母さんが、スーパーのビニール袋を
下りてきた私へと突き出す。
「ぅぅ…ごめんね母さん〜!」
受け取りながら、感極まってボロボロ泣き出す私。

「泣かんでいいから"汗臭い"体洗ってきなさいっ!ソレまでご飯待ってるから!」
あきれた顔と困った顔を足した表情で優しく母さんが言う。
「了解、ちょっと待っててね…!」
ズズ…と鼻をすすりながら脱衣所を兼ねた洗面所のドアを閉める私。

「うあ…今更だけど臭うね汗って…!」
自分の靴下の良い香りに鼻が曲がりそうになる私…
「んっ?あれっ…??」
薄暗いうえに狭いので確認できないが、足の傷が手探りで見つけられない…
「あんな大きいの…なんでっ??」
しかし痛みは感じてる、それも何か変な感じ…

「後にしよっ、母さんがご飯待ってる!」
急いで服を全部脱ぎ、両足にそれぞれビニール袋を履いて輪ゴムで縁を止める。
「よし、完璧!」
気合を入れて、すごくカッコ悪い姿で浴室に入る私。
「イタタッ…!まだ剥けてなくて"マメ"の状態なのかな?」

いきなり気を失ったせいで記憶が曖昧な私は、そう言い聞かせて
蛇口をひねって熱い飛沫を顔いっぱいに浴びるのでした。


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