ほわいと ★ すかい
★.....one day
世界はとても広大なのに、人間にはとても小さい..
ソレは見渡せる景色は地平線の果てまで広がっているのに、
頭の中の"現実=常識"という小さなパックに詰められてしまうから..
大切な現実の常識は忘れてはいけないけれど、
空想をたしなむ"想像の世界"にはそんな滅菌パックはいらない..
私はそう思ってる...
「あ..」
私は唐突に目を覚ました―
時計の針だけが忙しなくカチ カチ 存在を主張する夜の刻…
部屋を染める濃すぎる藍色と、澄み切った静けさ…
何も考えてない視線が、寝たままでぼやけた"世界"を一周する…
やたらに眩しい窓…すぐ傍にある道路の街燈からの迷惑な光の侵入…
恋愛ものの文庫本と、励まし系エッセイを並べた3段棚の小さなピンクの本棚…
使い古した木製の勉強机とイスの2人は、ギシギシと軋む"お爺さん"…
その真横に貼られた人気スポーツ選手の大きなポスター…
友達からもらった無関心な装飾品…
そんなトコをゆるい頭で観察した私…
「………」
言葉をこぼすことなく静かに半身を起こし、
ベットを降りて部屋をでた…
カララ…
引き戸を開けると1メートル四方の小さな踊り場。
正面に母の眠る部屋の扉があり、左方に下へと降りる階段がある。
トタッ‥
慣れた足取りで、灯りもつけずに静かに階段を下っていく私…
階段を降りればソコは玄関とキッチンの入り口…
ふと‥私はキッチンの引き戸に、"ドアノブ"があるのに気付く…
「………」
何故か思考もぜず、そのノブをひねりドアを開けて中に入っていく私…
パタン…
不意にドアが閉じたけど私は気にしなかった…
キッチンであるべき部屋は、私の部屋よりも深い海の底の闇で満たされていた…
狭さを強調するテーブルや食器棚はその闇に溶け、
私は"無限"の中を進んでいく…
パキャッ‥
記憶の位置で冷蔵庫のドアを開き、中のミルクパックを取りだす…
コクッ..コクッ..
渇いた喉を鳴らして、私は冷たい"牛のジュース"をカラダの内側へと注ぎ込む…
開いたままの冷蔵庫からは冷気が漏れだし、
私の素足を優しく舐めるように触っていく…
そんな家電製品の卑猥な仕草に眉をひそめ、私は重たいドアを閉じた…
「やぁ… "牛の雌汁(メスジル)"は美味しかったかい…?」
後ろからした不意な声に、首を回し振り返る私…
闇の海に青白く浮かびあがる不思議な人影…
頭がやけに大きく、体はやけに細い…
頭にある大きな丸く赤い目?が、ぼんやりと電灯みたいに光っている…

「人形みたい…」
私は牛乳と唾液の匂いをまとわせた短い言葉を刻む…
「きみも人形みたいだよ…とっても可愛らしい…♪」
じっとりした不快な大人の男性の声で、人形が言葉を返す…
私はそれに返事せず、体を人形の立つ方に向けて、ゆっくりと歩いていく…
「おいで、もっと美味しいモノをあげるよん…♪」
手を差し伸べるような仕草で私を招く人形…
「………」
その脇を行過ぎる私…
すれ違う時、私はチラリ‥と人形を観察した…
身長は私と同じ位…
大きな顔の大きな赤い目を覗いた瞬間、ゾクッ‥て嫌な寒気がした…
私は急いで"ノブ"ではなく取っ手に指をかけ、引き戸を開けた…
カラカラ…
「あ…」
玄関からのわずかな光が台所に差し込み、振り向くと人形の姿はソコになかった…
「あ…」
私は手に牛乳パックを持ったままなのに気付く…
けれどもう一度"中"に戻るのを拒んだ私は、階段を上へと上がった…
「あ…」
たどり着いた私の部屋のドアに、さっきと同じ"ドアノブ"がついている…
禍々しい彫りのついた気持ちの悪いソレ…
カチャ…
ゆっくり開けた先にはキッチンと同じ闇…
藍色さえも見えない闇が、私の部屋をどこかに隠していた…
「おかえり…寄り道しなかったかい…?」
部屋の左隅に置いてある私のベット…その上にさっきの人形の姿が浮かぶ…
「そこ…わたしのベット…」
人形を直接見ず、指をさしてベットに近寄る私…
「おや、これは失礼…♪」
トッ…小さな足音を刻んで、ベットから降りる人形…
「だけどボクの寝るところがなくなるな〜♪」
不真面目にからかう人形の横を抜けて、私はベットに上がった…
「……」
シーツの上にお尻を下ろす私…
その脇で、無言で立ちすくむ人形…
横目に見るとやはり頭が大きく、血のように赤い大きな眼を光らせている…
コククッ‥
緊張する私は、持ってきた牛乳パックの残りを飲み干す…
わずかな牛の体液は、まるで生きてるような生ぬるさで喉を下っていく…
「………」
中身のなくなったパックの置き場所を探す私…
「もらってあげるよ☆…だから少しベットを譲ってくれないかい?」
しゃがんで覗き込んでくる人形…
その真っ赤な目に映った私は、まるで全身に血を浴びた姿で揺らいでいる…
「だめっ…!」
全身を駆け抜ける寒気に、"危険"を察して後ずさる私…
カコッ‥
「あっ…」
布団に引っ掛けた牛乳パックが手から放れ、軽い音を立てて床に転がる…
急いで手を伸ばす私の前で、人形が横からゆっくりソレを拾いあげる…
ニィィィ…
目の下に寝転んだ三日月の裂け目を作り、人形がイヤらしく笑った…
ギシッ…
小さなベットの上に人形と私が並ぶ…
「狭いよ…二人じゃ寝れないっ…!」
「ふふっ…心配いらないよん…♪」
ドッ!
「痛っ…!?」
不意に人形の両手が私の胸を突き、乱暴にベットへと押し倒した…
そのまま私のお腹にまたがって、見下ろす姿勢をとる笑顔?の人形…
ドロッ…
「あぁぁ‥!?」
真正面から人形の赤い目を覗き込んだ私…
まるでネットリした血の池に溶かされていくみたいな不快感に鳥肌が浮かぶ…
それと入れ替わるように霞んでいく私の意識…
クタリ‥体から力が抜けて落ちて、私は意識を失ってしまった…
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