◆
ブツブツ つぶやく筏(イカダ)が一そう、果てない海原を進む‥
一面の青に溶け込む筏を示すのは、それに乗る肌色と藍色の二つの点。
あいかわらず全裸なソラは、胸と股間を手で覆いヒザ立ちの格好。
片や異形は前かがみにしゃがみ、老人のように背を丸めた姿勢。
ただただ続く波の音、誰かの独り言のハーモニーを耳に、
彼方の空を見つめる二人…
「 ねっ、名前教えて! 」
突然にソラが口を開いた。
「 ん、俺か?名前はトヤンや。」
「 ふ〜ん、私はソラ。 」
横を向いて返事したトヤンに対し、ソラは目線まで正面のまま‥
「 なんや聞いといて興味なさげやな〜 」
「 ん?そんなことないよ、・と違って呼びやすくて良かった! 」
「 なんやそれ‥ 」
|
|
トヤンの中では・並に理解が困難なソラ。
「 それにしてもトヤン目がいいよね〜、大きいからなの? 」
と、今度はじぃーっと 真横から覗き込むソラ。
「 ほんまマイペースやな‥、大きさ以前に構造がちゃうねん。 」
「 黒目しかないこと? 」
「 ちゃうちゃう、星喰いの頭の中には大きな空間があんねん。
そこで内側に何重にもレンズ付けて視力上げれる仕組みなんよ。 」
「 わー、わかんないけど中が空っぽなんだ〜 」
「 あほぅ、誰が空っぽ言うてん!
大事なもんや臓器がちゃんとはいっとるわ! 」
「 あはは‥ごめんなさい〜 」
かる〜いノリのソラに、力説してしまうトヤン‥
「 それで・まであとどれくらい離れてるの? 」
「 ん?ああ、1,000,000トルや。 」
「 うぞお!?何ソレぇ!! 」
“メートル”に聞こえたソラは真顔で混乱する。
|
◆
「 ‥人の単位に訳すと5キロメートル前後や、
これでわかるか? 」
「 ‥うう多分、なんかほっとした。 」
額に冷や汗が垂れるソラ。
「 んー でもまだ遠いよね‥
それだけ遠くを見てもココには私たちしかいないの? 」
そう言って周りを見回すソラ‥
「 そや、おったら多分やば‥ 」
「 トヤンいるぅ!!! 」
「 なんやてぇ!?? 」
ソラの叫びを追って振り向くトヤン。
後方100メートルほど離れて、浮遊する何かがいた。
「 あれ何?どうなてるの? 」
ソラが驚いたのは、子供みたいな人型ではなく、
ソレが片手でつかまる一本の棒。
縦に垂直で宙に浮く棒はあまりに不可思議すぎた‥
|
|
「 やばい小人や!あかん、ペテンカぁ! 」
ドスっ、と二本指突き刺すトヤン。。
「 あほ!ご主人、痛い!何か御用で? 」
「 いきなりアホ言うな!加速や!全力でぶっとばせ! 」
「 ご主人、かしこまり! 」
ぐぐぐ‥とペテンカに小さな振動が走る‥
「 あれが小人‥ 」
子供のような小柄な体をネズミ色の服で覆っている。
頭は大きく尖り、顔の両端の赤い目がこっちを睨んで見えた‥
ゴウっ!!
大きな音としぶきを上げていきなりペテンカが加速した!
「 うわあああ〜!なによこのスピード、速すぎるぅ‥!! 」
四つんばいにしがみつくソラの髪が後ろでバサっとほどける。
しぶきが入って半開き目で、ペテンカにぐっ と指を食い込ます‥
「 こら!背中痛い!抜いて下さい、馬鹿! 」
「 きもいわよあんた‥、それより今まで絶対なまけてたでしょ! 」
さらに足の指も食い込ませ、なんとか安定させるソラ。
|
◆
「 失礼なおまえ!実力とは、必要な時に見せつけるとかこいい! 」
「 あほだ‥ 」
そんなペテンカとやりとりするソラの横で、同じく身体を固定して、
無言で前後を確認するトヤン‥
( ・はまだこっちに気付いとらん‥俺らだけ先に逃げるべきか‥? )
悩むトヤン‥小人はペテンカの加速に離されることなくついて来る‥
しかも、相当な風圧を受ける二人に対し、
小人も棒も直立姿勢を保ち、スピード感を感じさせない‥
( 気味悪るすぎる‥決断すべきや! )
ぐっ、と再び口に手を突っ込むトヤン。
「 うわっ、何してんのトヤン!ペテンカ酔い? 」
驚くソラを横目にトヤンは小さな丸いシール、
“窓(まど)”を探した‥
そんな二人に不意に影がかかる。
|
|
「 えっ‥? 」
先に気付いたソラが風に目を細めながらソレを見上げた。
二人のほぼ真上、しかも1メートルほどの近距離に、
光沢を放つ金属質の太い棒が浮かんでいた‥
「 何よ‥コレ、まるで宙に止まってる‥?! 」
―トスン‥!
棒はいきなりに二人の間をぬい、ペテンカに突き刺さった。
「 ヒドイ、ご主人!これが愛のムチ? 」
アホな悲鳴だが、太さ30センチはある棒の刺さる光景は、
ペテンカとはいえ生々しい‥
そんな棒の予想外の急襲でトヤンもあっけにとられた‥
( はっ!あかん!! )
うげっ‥と腕を引き抜くと、指にはシールが一枚‥
ポウン―
同時に高音だが軽い金属音が響き渡る‥
|
「 あ…?! 」
「 うわぁああ、トヤンっ?! 」
棒から突然生えた10センチ太さの針が、トヤンの目を貫いていた。
「 これ…使え! 」
震える腕と声でシールを突き出すトヤン。
それが何かは、ソラにもわかる…
ペテンカの減速で余裕のできた両手、
片方の手の平にシールを置き、もう一方の指を添える。
ススス‥ン
「 ひっ! 」
高さ2メートルほどの棒の上部に、幾つのも針が突き出した。
「 何しとる‥! 」
うめくトヤンの手を足の指でつかむソラ。
「 おいてけないの! 」
きゅきゅ‥とシールを円になぞった。
「 えっ‥? 」
赤い滴がソラの視界をスローに流れた‥
追って手の平にするどい痛みが走る。
|
|
「 ‥えっ? 」
シールを乗せた手の平にソレは無く、赤い裂け目があった。
そこからドロッ‥と溢れ出す血…
棒に生えた針の幾つかが蛇のよう宙を泳いでいた。
その一本からしたたる血の滴はソラのもの‥
溢れ出る赤に絶句するソラ。
スヒュン―
風を切り、触手化した針がソラに絡みつく。
ボウッ―
棒本体が異様にふくらみ上下二つのコブを作る。
その拍子に先がペテンカから抜け、宙に浮き上がる。
上部のコブがドーナツ状に輪を形成し、
持ち上げたソラの背中をそこに押し付ける。
一方下方のコブがソラのスネから下の足を飲み込み、
虫のサナギのような袋を形成した。
更にサナギ袋の左右より小さな袋が生え、
ソラも手首より先をそれぞれくわえる。
「…ん、えっ? 」
ソラの放心よりこの間約2秒…
|
絡みついた触手が素早くほどかれ、
代わりに細い触手が両太もも・肩に巻かれ、ソラを直立姿勢に固定する。
太い針は輪の左右上下に四本構えられ、残り四本の触手針が宙を泳いだ。
その高速な棒の動きに、状況が理解できないソラ。
ただ、手の傷の痛みが消え少し冷静になる。
「 トヤン! 」
ソラの足元で、再び手を口に運ぶトヤン。
しかしその動きは遅く、かなり危険な状態に見えた。
「 …大声で、・呼べ! 」
ソラの声に、絞り出した声で返すトヤン。
涙目にうなづくソラ。
「 うっ‥!? 」
その小さな口を球状の物体がふさぐ。
細いチューブで輪とつながるそれが、ソラの最後の自由を奪った。
ヌラリ‥磔(はりつけ)の少女の正面に二本の触手針が構える。
ぷちゅん‥
( ううっ!! )
鋭い先端がソラの突き出す乳頭を貫いた‥
|
|
触手針は正確に先端のみを乳肉に刺していた。
ちゅちゅぅぅ…
針の先端から、ソラの乳房の中に液体が注入される。
ぴくくっ…と痙攣(けいれん)する少女の裸体‥
やがて瞳の灯が揺らぎ、幾粒かの涙をこぼして、
人形のように固まった‥
完全に動きを止めた少女の横にスーッと並ぶ小人‥
そして虫の息のトヤンを見下ろす。
「 星喰い‥清潔区域への侵入は厳罰だ。
死体はあとで処理班を呼ぶ。」
甲高くどこか機械的で無機質な冷たい声で、小人が言った。
返事を聞く気もない小人は宙をすべるように移動して、
ソラの正面に立つ。
ぷにゅっ ぷにゅっ‥と針刺さる、柔らかな乳房を強くつまむ‥
「 そいつは廃棄品や‥ 」
蚊のような小さなトヤンの声‥
振り返ることなく小人は乳房に小さな注射器を刺す。
「 確かに乳肉の育ちも悪いし、中身の含乳量も最悪だ。」
小人が乳を離すと残り二本の触手針がゆっくり動いた。
|
二本の触手は、ソラのおへその左右にあてがわれた‥
小人が指を宙に躍らせると、触手先端がおへその両脇をめくり、
中の肉粒を光に当てた‥
続けてその隙間にたまったへその垢を針でこそぎ取り、
おへそのまわりの肌を、赤く染めていった。
丁寧におへそを弄(いじ)る触手を自動化し、
すぐ下の肉の割れ目に高さを下げる小人。
くちゅぷっ‥
指で割れ目が開かれ、少し溜まっていた愛液がこぼれる。
くっちゅ くっちゅ くっちゅ‥
割れ目の中、ゆっくり膣口をかき回す小人‥
口をふさいだ玉が動き、ソラの鼻に取り付く。
玉は今度は鼻口に管を伸ばし気体を注入し始めた。
するとソラの頬が少し紅潮し、股間から汁がこぼれ出した。
「 ふむ‥生殖器のスープ製造力は悪くない。」
「 見逃したれや‥ 」
ソラを玩(もてあそ)ぶ小人にトヤンが怒りの声をもらす‥
|
|
「 研究の都合、検体はいくらいても困りはしない。
成長期の雌なら尚更我々に貢献してもらう。 」
「 くそ‥ 」
トヤンの声はそれで途絶えた‥
小人もソラの割れ目から指を抜くと、
へそを弄る触手をそのままに棒を上昇させた。

股間を濡らすソラは表情も無くその身を預ける‥
不意に光の玉が棒と小人を包み、その姿をかき消した‥
トヤンとペテンカは何も言わず、ただ、海を流れた‥
|
プカプカ‥と青い筏が浮かんでいた‥
とん‥
軽く足を鳴らして誰かがペテンカの背に降りた。
「 ご主人‥お目覚めでしょうか? 」
ペテンカらしくない弱弱しい声だった‥
「 おまえトヤンのパートナーだね。
あ〜あ、仲良く風穴開けられちゃって〜♪ 」
トヤンの横にしゃがみ込む黒い人影。
「 トヤン〜まだ生きてるよね☆ 」
ぺちぺち、とトヤンの頬をたたく。
「 ‥最悪や、死に際に・見てもうた‥ 」
なんとか聞き取れる声でトヤンが返した。
「 よしよし、トルターのトコで元気になってね♪ 」
・は窓のシールをトヤンに置くと円になぞった。
|
|
ポン―
光の玉がトヤンとペタンカ、あと水まで球体に切り取って、
その姿をかき消した。
浮かんでそれを見下ろす・。
「 さて、星喰いに喧嘩売るなんて無知な小人はドコかな〜♪ 」
5センチ四方の 四角いガラスキューブを手の平において、
中を走る幾つもの細い光線を見つめる・。
「 あらら、研究施設の隅っこだ。
正規の研究員めざす出来損ないみたいだね☆ 」
パン―と両手でキューブをつぶすとゆっくり動き出す・。
「 ルートが遠いからソラが大変な目にあう前に急がないとね〜♪ 」
あいかわなずな・にあせりは感じられない‥
ゆっくりとふわふわ飛んで、いつしか空の青に溶け込んでいった。
青い青い世界で‥風は血なまぐささをかき消し、
何もなかった平穏を取り繕うようにさざなみが流れ続けた‥
|