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   「姉貴どのぉ〜」

     「うわっ!」

  眩しい光の消えた刹那、聞こえた声に緋百合が飛び上がった。

     「‥あのさぁー 化け物相手に説教こいてて、
  妹の呻きにびびるってありですか〜?」

  不機嫌に紅葉がもらす。
  髪がだらんと垂れ下がり見た目は確かに怖い‥

     「だっ‥大丈夫もみじ!!」

  「いや‥見たまんまやばくない私?
  とにかくお腹が重くってほんと‥」

     見れば燭台に固定された手足首が食い込んで痛そう‥

    「わかった!とにかく下ろすね!」

     「そーっとしてよね、
  がくん、って落ちて股のソレつぶしたら
  わたしゃ泣くよ!」

    「わかってる‥そっと‥そって‥」

     手のほうから固定具をはずし、
  紅葉を背中から床に下ろす緋百合‥

        「‥あのさぁ、この子、前の男の子だと思う‥」

     ぽつんと紅葉がつぶやく‥

     「‥そっかぁー、なんとなくそう思ってた。
だって私なんか虫みたいなの産まされたんだから‥」

     苦笑で返す緋百合はどこかわざとらしい‥

     「‥がんばってみるわ私‥この子の為に‥」

     「よりをもどすの?」

     足もはずれ、完全に寝そべった状態の紅葉。
  その横に緋百合が座る‥

     「なんか急に自分が子供だったって、わかったの‥
  姉貴が男にいいようにされて落ち込んでる‥
  って今回の旅の電話もらった時、
  正直馬鹿にしてた‥」

     真剣な妹の顔をだまって見つめる緋百合‥

  「でも少しわかったの。
  恋愛って遊びでいつまでもいっちゃいけないんだって!
  だから、真剣に付き合いなおそって‥言ってみる!」

  「そう‥がんばれっ!」

    小さくこぶしを構えて緋百合は返事を返した‥
















    
  追伸‥

     まともな衣服に着替えた二人は突然の訪問をうけた‥
    外は朝に近づき明るみをおび、近所の村の人が
     風呂からあがる煙を山火事と驚いて駆けつけてきたのだ‥
     道に迷い宿を借りたと短く説明した二人は、
     近くの病院まで車で連れていってもらった‥
     検査もすんで病室に入った3人‥
     紅葉もその子もいたって元気でじゃれ合う傍、
  ベット脇のイスで緋百合はこくり、こくりと船をこぐ‥
     その緋百合の服の袖を小さな手がひっぱる‥

     「あっ、へっ‥??」

    「うわっ!ひっでーよだれっ。汚いねーこのおばちゃん〜」

    「おっ、おば‥!?ってこの子の叔母になるんだ私‥」

  「姉ちゃんにも名前考えて欲しいってさ。」

    「へっ?それでおこしたのこの子?」

    無邪気な笑顔が二つ並ぶ‥

   「‥ほたるってどうかな?」

     「ほーっ、なんで?」

     「なんだろ、私たちの名前にちなむんだけど、
  しっかりとした自分の色に輝く‥
  そんな強さのある子になってほしいかなって。」

     「“色”を曖昧にしたんだね。
  そだね、可愛もくあるし候補にいれたっと!」

  「はは、あとは旦那さんだね‥!」

     病室の窓から差し込む暖かな陽の光‥

     優しく部屋を包み込んでいるよう‥

     それは、そう‥緋百合の見送った三人の光のよう‥

     癒し‥とは本来 人が人に与えるもの‥

     忘れたものは愛かな‥?希望かな‥?

     言葉が幾つも紡がれて、何が正しいか混乱した世界‥

     その歪が癒しを求める‥

     (そう‥忘れてしまえばいいわけじゃない‥)

    見放したものが更に歪んでいく‥

     (きっと‥みんなわかってるはずなんだ‥)

     昨日のこと‥今までのことが緋百合の頭をよぎる‥

     (私は馬鹿だから、難しく考えてもわかんないや‥)

     理解ではなく 感じて‥
  緋百合は大きく陽のぬくもりをすいこんだ‥

     そして癒しなんて こんな単純でいいんだと思った‥
                                        小袖の手 [終]
  




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