忘れていた静けさだった‥
「‥もぅ‥もみじ、寒ぃ…」
ずりずり とひざをすって
縁側の襖を閉めつつ緋百合がぼやいた。
地を這うような冷気が顔の触れて、
おもわず目を覚ましたのだ…
再び布団に包まり冷えた手足を擦り合わせる緋百合‥
(…)
本当に静かだと緋百合は思った…
都会との一番の違いが昼夜の光と音の境界なのだろう…
(静かで…そして広い…)
心の声がとても大きな音となり響いてゆくよう…
ひしめきあう街とは違い、
ここではちっぽけな自分の存在が
しっかりと感じられた…
さぁ‥
音もない冷気のせせらぎが再び緋百合の頬に触れた‥
(もみじが帰ってきた‥)
ぬくもりに包まれる布団のなかで
どんよりとした意識で緋百合は思う‥
まぶたを開くこともなく、夢の淵へと沈んでゆく‥
くちゅ
冷たい何かが緋百合の唇に触れた‥
(‥ん‥?)
………
口の中に何かが注がれてくる…
異変を感じた緋百合は目を開いた…
「んっ‥ぐっ?」
驚いた拍子にそれを飲み込んだ‥
同時に唇から感触がはなれる‥
「う‥ああっ!?」
大きく開く緋百合の目に映った、小さくて黒いくちびる…
幼げな少女の顔がそこにあった…
驚くほどに白い顔…
そして黒く くり抜かれた目の穴を向けて…

「ひぃっ‥!!」
その目は空っぽなのに見開かれ、
タールのようなどろっとした液体が詰まって揺れる‥
闇に浮かぶそれは、闇の黒さよりも深く、重たい‥
「うわぁぁ‥あっ‥?あぅ‥?!」
奮い立つ思いで布団から飛び出そうとした緋百合…
しかし体が痺れて思いは手足に伝わらない…
(…さっき飲まされたアレ…?)
“金縛り”ではないはっきりとした記憶…
不気味な少女のくちびるから粘っこい糸が伸び、
緋百合の唇とつながっていた…
「うぅぅ…!うぅ…!」
緋百合の全身にぷつぷつと汗玉が吹き出す‥
震える肌からそれは流れて、いくつものスジを描く‥
それは体をぞうきんの様にねじり、絞られる感覚に近い‥
緋百合は確かに
恐怖という手で理性をねじられる苦痛を感じた‥
そんな苦悶と怯えを浮かべる緋百合を他所(よそ)に、
少女は上布団をめくりあげる‥
「ふぅ…!」
ぬくもりのかわりに冷気の抱擁を受けて
ぶるっと大きく震える緋百合…
少女はさらに衣服へと手をかけ、
ハンテン、浴衣をするすると脱がしていく…
「ふぅ‥ふぅぅ‥!」
冷気‥時折触れる少女の冷たすぎる指‥
赤子のようにされるがままの無抵抗な自分に
緋百合はただ呻(うめ)くしかなかった‥
白い布団に転がされた女の裸体‥
胸と股に残された飾りけのない下着‥
少女は次にパンツをすーっと足に這わせて取り去る‥
残されたブラジャーを見つめる緋百合に
白い手と黒い目が迫る‥
「ひぃい‥!!」
少女はおもむろに片乳のブラをぺろっとめくりあげた‥
そして小さなくちびるをくぁぱぁ…と大きく広げると、
唐突に緋百合のお乳に食らいついた…
「きゃぁ‥!」
お乳を氷で包まれたような冷たさ…
さらに少女は乳房に歯を立ててきた…
「うぎっ…!いやぁ!」
柔らかな乳の肉にぐちぐちと食い込む小さな歯たち…
「いやぁっ!!痛いぃー!!」
大きな叫びを上げて涙をこぼす緋百合‥
くぱぁ‥
少女の口が唾液で糸を引きながら乳房をはなれた‥
お乳に残された歯型の傷から血がにじみ、
白い肉玉に朱の筆で幾つもの線を描く‥
少女はそれにブラをかぶせた。
緋百合は‥気を失っている‥
痛みからの解放で、恐怖で張り詰めた糸も切れたようだ‥
『‥‥‥』
無表情にその寝顔を眺める少女‥
すっ‥と立ち上がると胸だけを隠した緋百合をそのままに、
襖を開けて出て行ってしまった‥
「うう‥‥」
寒さにうなされる緋百合‥
しかし痺れた体は身を丸めることも
布団を手繰り寄せることもできない‥
その現実は意識のない緋百合に
酷い悪夢を見せているだろう‥
小さな緋百合の呻きが
誰に届くこともなく闇に溶けていった…
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