ドタドタタ…‥
木のきしみと粗い太鼓のはずみが混じって響く。
「ひゆり姉ちゃーん!」
そこに加わったのは甲高い女の声―
その音が騒がしく響く廊下のふすまがすーっと開いて
にゅっと別の女が顔をだす。
「あっ、こら、もみじ!ゆっ床が抜けるでしょ!」
驚いてか、たどたどしい声に眠そうな目を廊下にはせる。
「うわっ!恐っ」
寸での所まで駆けて来ていた騒音の主が、
廊下に突き出すその顔に驚いて飛び上がる。
少し幼めな顔つきに大きな目を見開いて―
「‥‥あなたもみじぃ、
妹だからって大声でそんなこといわなくても…」
顔を出す女は面を赤らめ、眠そうな目を更に細める。
「あっ、ひゆり姉ちゃんそこで沈まないの!
もっとお化けみたくなんでしょ。」
「それ、励ましなんでしょ?」
細い目とひきった眉で見上げながらぼそり‥
「うっ、マジに恐いんですけど姉貴殿…」
苦笑いげに大きな目を細めて言った。
二人の女は会話のとうり姉妹である。
3つと歳ははなれてないが、落ち着きある姉は年増に、
活発で幼い顔立ちの妹は歳若く見られている。
暗そうな細い目の姉が笹木 緋百合(ひゆり)、
騒がしく大きな目の妹が笹木 紅葉(もみじ)といった。
親が朱色の草花にこだわって名づけたようだが、
二人の女は年頃も向かえて、それぞれに鮮やかな色を纏った
美しき花と葉であった。
二人は共に長く黒い髪を、紅葉は二本に束ね、
緋百合は一つにまとめて腰あたりまで流している。
服装も共にGパンに厚手のセーターのいでたちで、
緋百合の側に本人のロングコートと紅葉のダウンジャケットが
たたんで置いてあった。
「もみじ、あなたねー、家じゃないんだから、
もう少しおしとやかにしなさいよぉ!」
たどたどしく不器用な言葉が正面に座る妹に投げられた。
「ひゆり姉ちゃんこそなんでそう落ち着こうとしてんの?
こんな状況で!」
前に乗り出して紅葉が強く吐く。
「う‥ それはそうだけど…」
うつむき加減に言葉を探し出す緋百合。
「とっ、ともかくさっ、まず考えるには落ち着かなきゃでしょ?」
大きな手ぶりを添える緋百合だが‥
「単刀直入型の姉貴のセリフじゃないんだけど?」
冷たい紅葉の一言にあしらわれる。
その責任感から、暗くなるまで落ち着いていた緋百合には
痛い一言でもあった…
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